2011-11-01から1ヶ月間の記事一覧

泉鏡花「竜潭譚」論 ― 〈反国家〉の様相を読む  ―

神戸大学大学院博士後期課程 西村英津子 「竜潭譚」(明治二九年)は、主人公「ちさと」の幼児体験を通して、前近代の民衆の精神世界が国家に回収されていく様相と、回収しきれない(されない)精神世界があることを示す物語だと私は考えている。そして、本…

近代黎明期の文学空間の一考察―『芳譚雑誌』という場―

神戸大学大学院博士後期課程 魯恵英文学通史から曲亭馬琴の読本や為永春水の人情本などは江戸文学の最後に位置し、坪内逍遥の『小説神髄』『当世書生気質』や二葉亭四迷の『小説総論』は近代文学の出発点として紹介される。両者の断絶によりその狭間に位置す…

庄野潤三の小説と神戸

プール学院大学 西尾宣明 庄野潤三は、敗戦後の一九四六年五月、神戸在住の島尾敏雄を中心とする同人誌「光燿」に参加し、文学的活動をはじめた。そののち、「VIKING」にも参加し、一九五〇年には、富士正晴に、島尾のあとの「VIKING」の主要作…